□□季刊 手の仕事□□

編集長ごあいさつ (創刊の動機)
 季刊雑誌『手の仕事』は、“仕事とはなにかを考えてみよう”と、平成5年8月に創刊しました。 当時私は、もう仕事を持ちそれでお金を得ていましたが、けっして嫌いなことをしているわけではないのに、自分のなかになにか満たされないものが存在することを否定できませんでした。 ただそれは、仕事を変えさえすれば解消するようなものではなく、現代の仕事そのものが内包している問題のように感じていたのです。「ほかの人たちはいったいどう思っているのだろう。仕事っていったいなんだろう」…そんな問いに対する答がほしかった、それが雑誌創刊の動機でした。

 “仕事”という言葉は、生活の糧を得るための職業を意味するだけでなく、芸術作品などに対して「いい仕事だ」という使い方をしたり、その人自身の生き方を意味する場合もあります。 そうした広い意味を持つ仕事に関して、身近にいる「仕事人」から話を聞くことでなにかがみえてくるかもしれないと思ったのです。 また、私たちの祖先の時代からずっと、人間の活動を支えてきたのは“手”であり、それは現代の仕事においても同じはずだと考え、雑誌タイトルを『手の仕事』としました。
ただ、やりたいという気持ちだけで収支もなにも考えずに発進してしまった『手の仕事』でしたが、幸い名古屋市近郊で活動しているライター、カメラマン、イラストレーター諸氏の賛同と協力を得ることができ、 販売してくださる書店・ギャラリーも徐々に増えてきています。創刊以来、饅頭屋、美容師、印刷屋、ガラス作家、染織作家、木工作家、農業、クリーニング屋など様々な職業に携わる方々、 あるいは職業とは呼べないような活動をしている方々のお話を、聞き書きやルポ形式でまとめてきました。 このほか、名古屋を中心とした地域は陶磁器産業・陶芸の中心地であることから「焼きもの野郎の肖像」というシリーズで、毎回陶芸家にインタビューをしています。 仕事とはなにかという問いに対して、まだ明確に答えることはできませんが、いろいろな人の話を通じ、やはり主役は人間であることを改めて認識できたのが最大の収穫です。 これからもできるかぎり雑誌をつくり続け、もっといろいろな「仕事人」の話を聞きたいと思っています。(朝)

「手の仕事」の歩み
平成5年8月、年4回の季刊で「季刊雑誌 手の仕事」Vol.1創刊。
平成13年4月、諸般の事情によりVol.28発行をもって休刊。
平成13年7月より、フリーペーパー「手の仕事メモ」を発行。
平成14年秋、有限会社GMKワークス設立。
平成15年1月、GMKワークスの一部門として「季刊 手の仕事」復刊、
現在に至る。