自分探しのサイト   文・小野穣


イラスト・岩崎里香 


 正直に言うと、自分の職業が何なのか時々分からなくなるときがある。肩書きは一応陶芸家ということにしていただいているのだが、実際の収入の順序からいうと四番目位なのである。これで堂々と名乗っていいのかと思うのだが、他の仕事はまず表に出てこないマイナーなものなので伏せておこうと思う。
 ところで最近僕がはまっているのが携帯の趣味人のサイトである。いわゆるいかがわしい出会い系と違い、同じ趣味、もしくは興味のある人達が集まり、仲間になって会話するもので、実際に会ったりもするのだ。実際に会ったりするのに出会い系とどこが違うのかと疑問なのだが、今、知り合いが増えて仕方がない状態だ。最初はかなりお互いに警戒する。星の王子様を読んだことがあるなら分かると思うが、いわゆる王子さまと親友のきつねの出会いなのである。はじめは遠くからお互いの存在を確認するだけなのだが、何度もメールでやりとりしているうちに希薄だったその存在が次第に大きく、濃くなっていくのだ。途中、メールがきているサインは無いのについ開けてみてしまって、とにかく楽しみになる。最後にはメールが来ていないと仕事が手に付かず、何時間もメールを打って一日を台無しにしてしまうことが続いて自己嫌悪に陥ってしまった。そのサイトには自己紹介を載せる所があり、結構本当のことを載せている人が多く、安心ではあるが、不安もあるため自分のしている仕事の中から一番差し障りのない職業で自己紹介している。その仕事しかしていないように書かれた自己紹介のプロフィールは不思議で、違う自分がそこにいるため新しい発見もあり、言い訳なのだろうが自分探しの旅のようである。いろんな締め切りが待っているから早く抜け出さなくてはいけないのだが困ったものである。