夏の間、ある人の言葉を追いかけていた。MDに封印された話し言葉の端をすくい上げる、モニターに貼り付ける、流れ落ちないように十四歳の目で監視する。言葉違えを撚りあわせる、意味を紡ぐ、物語を織り上げる。まとまりを欠いた言の葉のパッチワーク。なんてしっくりこない。
今年の夏は大変でした。からだが薬に反応して発疹が出たのです。熱も出ました。リンパ節も腫れました。多汗症にもなりました。リンパ節は小さな角のような突起で、それが突然耳の後ろに生えてきたので、束の間、鹿の気分を味わうことになりました。横になると角が枕に刺さるので、うつ伏せで眠りました。逆しまの世界を夢みました。
MDLPの二時間がモニターの前で二十四時間に伸長する。残りあと五本。言葉の海がモニターからあふれ出して部屋の中をぐるぐる回る。エレクトリックピアノの鍵盤の隙間にもぐり込む。猫の尖った耳の先で跳ねる。ぐるぐるっと回る。ぐるぐるぐるぐるっと目が回りそう。それとも回っているのはわたしなの?
言葉尽くしの意味の洪水に溺れて、仕事はなかなか終わらない。それは、とても、言葉に余る。
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