佐久島の今       写真 筒井誠己

 

 舵を握っているのが松本さんで、左で下を向いてスケジュールか何かを確認しているのが船長の藤井さんである。松本さんは勤続三〇年以上、藤井さんは勤続二六年。二人ともそれだけの期間を佐久島と一色の間を行き来してきた。そして明日も、その次の日も行き来し続ける。



 舵を握る手は三〇年間の全てを記憶している。うれしかったこと、つらかったこと、怖かったこと…。
 今日と同じ明日がないこともこの手が知っている。だからこそ、いつも新鮮な気持ちで海に向かうことができるのである。