マネー・マジック  文・水野裕子



 ここ5年程の間に、「人形もつくれるライター」から「ライターもできる人形屋」に変身した。理想的なライフスタイルなのだが、収入は減る一方である。
 6000円の人形を買ってくれたマダムが、人形の材料にどーぞといって何万円もしそうな絹のコートをくれた。それは、自分で着ることにした。
 先日、フリーマーケットに出店した。5000円で買ったけど薄汚れて着なくなったジャケットを出したら、10円でも売れなかった。不憫になって、持ち帰って洗濯したらきれいになったので、また着ている。
 東京で個展をしたいが20万円の資金繰りに悩んでいたら、2億円でホテルを建てたいという友人に「20万円は40歳過ぎて迷う額ではない」と言われ、強気になった。
 骨董屋で気に入った100円人形を4つ買ったら、酒臭い店主のオヤジが「高いやつももってけ」と言って、200円の人形をこっそりくれた。




俗物日記    文・小出朝生



最近買ったものは紙おむつ、粉ミルク、シャンプーハット、バナナ、ヨーグルトなどのほかは、1900円のジャンパー、それに若干の書籍くらいか。 飲みに行くわけでもないし、ほとんど家の中にいる生活だから金はあまり使わない。しかし、つい先日15万円もの大金を一気に使ってしまった。コンピュータから異音が発生して使いものにならなくなったため、新しくiMacを購入したのである。 ちょうどその頃は、めずらしく明日が締め切りという仕事が3つくらい重なっていて、どうしてもコンピュータが必要だったのだ。コンピュータというものは、そういうときに限って壊れるものなのである。 それにしても、フリーになって明らかに収入は減っているのに何とか生きている。フリーはサラリーマンに比べて3倍の収入がないとやっていけないという話を聞いたことがある。この言い方はあまり好きではない。 どういう根拠でそうなるのかわからないし、何より先輩からの助言風の偉そうな態度がいやだ。この先はどうかわからないが、これまでお金で心底苦労したことがない。だから金について真剣に考えたことがない。 でも貯金の金額が減っていくのを見ると悲しい。俗物だねえ。