【泣く吾子、笑う吾子】

ウンチとの対話   文・小出朝生

 自分以外のウンチをこうもまじまじと眺めることになろうとは思ってもみなかった。
 保育園にはいる前の健太郎は健康そのものだったが、保育園に行きだした途端に次々と病にかかっている。まずはじめははしかだった。予防接種を受ける前のまだ一歳に満たないときで、いきなり四〇度近い熱が出て病院にかけつけた。そのときは下痢を伴っていて、「少し白っぽいな」とか「まだびちょびちょだ」とか、 ウンチを見ながら腕組みしてうなっていた。その後もたびたび熱を出したが、不思議なことに必ずといっていいほどウンチに普段とは違う変化が表れるのだ。それからというもの、ウンチが少しでもやわらかいと「また熱かあ」と警戒するようになった。
 ウンチに黒くて細長いものがたくさん混ざっているのに気づいたときには、「健太郎の体の中から変な虫がいっぱい出てきたよ」とびっくりした。よくよく見てみると、それはおそらく昼間保育園で食べたひじきであることがわかって、ほっとしたことがある。ミカンを食べた後には橙色のつぶつぶが混ざっているし、ケチャップを使ったオムレツのようなものを食べた後には赤いウンチとなる。まだうまく消化できないんだろうが、そんなウンチを見ていると健太郎の身体そのものがいとおしくなる。
 いとおしいと言えば、初めて固いウンチが出たときは、成長の証が具体的な形として目の前に表れたことに感激し、そのウンチをしばらく記念にとっておきたい気持ちになったものだ。最近はほとんど固いウンチばかりだから最初の感激はないが、ウンチも立派なコミュニケーションツールなんだなと日々実感している。
 最近笑えるのは、力んでいるときの健太郎の表情だ。真っ赤な顔をしてうなって、最後には人にすがるような目をして泣き出してしまう。ウンチをひねり出す作業は、健太郎にとっては大変な重労働なんだろう。そういうときは必ずコロコロしたウンチがオムツからぽろりと落ちる。
 ウンチ、バンザイ!