鳴らない携帯電話
文・水野裕子 |
ボランティアをしていた頃はうるさいくらいだった携帯電話も、活動を退いてからはビタッと鳴らなくなった。若い娘のようにちょっぴり淋しかったりもしたが、友だちの数が減ったわけではなかった。よく考えてみると、親しい友人ほど携帯電話をかけてくる頻度が低いのだ。高校時代からの友などは、携帯を鳴らしていいかどうかを普通の電話で確認してくるほどで、お互いの携帯番号を知らない友人もたくさんいる。まるで世捨て人のようだが、もともと(黒いジーコジーコ電話の頃から)電話嫌いだったわけだから、当たり前のことなのかもしれない。 |
優しい携帯電話
文・小出朝生 |
話が嫌いだという意見を聞くことは多い。私自身はそういう感覚はないし、携帯電話が必要悪のような疎ましい存在と思ったことはない。
我が家には計三台の電話があるが(固定一台、携帯二台)、一カ月の通信費の合計は一万五千円以下である。
仕事にも使っていることを考えると、かなり低い方ではないだろうか。仕事以外で電話をかけることはめったにないし、当然かかってくることも多くない。
だいたいが陸の孤島のような生活をしているので、これで電話が無くなったら自分と社会を繋ぐ糸がぷっつりと切れてしまうのではないかと恐れている。 |