ケータイヘヴィユーザーの憂鬱   文・山口 結美



 ケータイを持ち始めて三年になる。その前はピッチを二年ほど使っていた。 いずれにしても早いほうではない。使い始めたきっかけも、たまたまその関係の仕事をしていた友人から「二ヵ月間基本料金無料キャンペーン中だから使って」と頼まれたという消極的なものだった。 ところが使い始めたらこれが思った以上に便利なんである。それまで公衆電話を探すか帰宅して親の目を気にしつつ電話していたものが、思い立ったそのときに架けられる。 時計替わりにもなる(私は腕時計というものが苦手で着けられないのだ)。メールもできる。待ち合わせに遅れそうでも電話一本架ければOKである。 おかげでいまや毎月の支払いが一万円をくだることはないヘヴィユーザーと成り果てた。
 さて、自分が愛用するようになって、それまで以上に気になりだしたのがケータイを使う上でのマナー。 公共の場で他人がケータイで喋っているのが思いのほか鬱陶しいもんだということに改めて気づいた。 特に電車の中! 密閉された空間の中で隣に立っている、あるいは座っている人のケータイが鳴り出しただけでも「切っとけよなー」って思うのに「もしもーし」なんて喋りだされたらもう不愉快極まりない。 自分がそう感じるのだから他の人もそうであろうと思い、当初は乗る前にマナーモードにしていた。 が、ある時『心臓にペースメーカーを埋め込んでいる人や人工内耳を装着した人が近くにいた場合、電源が入っている限り悪影響がある』と知ってからは電源を切るようにしている。 この件に関しては様々な風評があるので少し調べてみた。すると電源が入っていることでそれらの機器が悪影響を受けることは事実であり、そうした人たちは常に不安感を抱きながら日常生活を送っているという。 そりゃあそうだろう、いまやケータイはどこにでも蔓延している。絶対安全な場所はおそらく自宅だけなのではないか。 健康である自分にはその不安感は想像できないが、だからこそせめて電車の中だけでも電源を切ろう、と思う。
 それにしてもケータイのメーカーはこのことについてどう考えているのだろう。電話とメール以外の機能を使わない私は、今ケータイでどれほどのことができるのかよくは知らないが、チケット予約や銀行振込までできるようだ。 今後ますますその役割は大きくなっていくのだろう。それならば、売りの部分ばかりを競って開発するのではなく、ケータイの持つそうしたダークサイドについてもっと情報を公開し開発を進める必要が、メーカー側にこそあるように思えるのだが……。