同窓会で僕の前に座った二人の会話

文・愛と音楽の製陶業  柴田雅光
 



「なんや、お前も鮎かけするんか?」
「そうや」
「へえー、それでどこ川へ行くの?」
「○○川が多いな」
「○○川か、あそこはよう釣れるでなあー。そやけど○○川は混むやろ」
「混んでることは混んでるけど、俺らが行くと皆、場所空けてくれるから、楽に釣れるわ」
「場所空けてくれる? そんなアホな。皆、場所取りに朝早くから行くのに、そんな空けてくれるわけないやろ」
「まあ、俺一人行くときはそうはいかんけど、連れのバスで行くといいんや」
「バス?」
「そうや、黒いバス」
「黒いバス?」
「うん。それで、その連れは音楽が好きな奴でなあ《こんな素晴らしい音楽、一人で聴くのは申し訳ない、皆にも聴かせてやりたい》とか言って、その黒いバスに大きなスピーカーを取り付けて大音量でその音楽を流していくんや」
「その音楽って、ひょっとしたら軍歌?」
「おっ、そうや、よう解ったなあー」
「それでひょっとしたらそのバスには、金の菊の御紋とか入っているわけ?」
「おっ、さすがお前、大学出ただけのことはあるなあ。そんでなあ、連れのそのバスで、大音量で軍歌流しながら川に行き、《これ着てけよ》と連れが貸してくれたお揃いのジャンパー着て川に降りていくと、皆場所空けてくれる」
「その連れとお前、仲いいの?」
「おう、ちょっと短気でキレると何をするかわからん奴やけど、日本の将来を真剣に考えたりする、結構、一本気な奴なんや」
「………」
「そうや、お前もそいつと一緒に鮎かけ行かへんか?」
「いや、俺は…」
「今度の日曜、連れの黒いバスで迎えに行くわ。ちょっと音楽がうるさいかもしれんが、まあガマンしてくれ。よし、決まった」
「あの…、その…」