結婚礼讃     文・ハセガワトモコ

 結婚はいいと思う。みんなは「財産保全の浅知恵」とか夢のないことをいうけれど、そんな理屈はどうでもいい。特別な事情がない限り、子が生まれたら、何よりもまず籍を入れたい。配偶者の家族に連なるためだ。ただし、順序は子が授かってからでいいと思う。そしてできればどちらかの親兄弟と一緒に永年住んでみる。もちろん苦しいが、時間とともに何かが芽生える。違う世代の日本人の考え方が肌を通して伝わってくる。それは育つ子にとっても財産だと思う。大家族の中に長い歳月いれば、自分の役割も変わるだろう。女性なら子から娘、娘から嫁へ。やがて母になり姑になる。人生をいろいろな立場で演じられるのは気苦労でなくラッキーだ。結婚は他人との出会いであり他世代との出会いの場である。いいセックスができる相手なら籍は入れるに限ると思っている。



  10年サイクル  文・水野裕子

  結婚して一〇年くらいになるが、二年程前からいろいろなものが壊れはじめた。まず、夫の体が壊れ、頭を手術した。次は車が水没して廃車になった。その後、テレビ・ビデオ・掃除機・アイロンと家電品が次々と壊れ、水道管、風呂に続き温水器とガスレンジも壊れた。おまけに、自宅前からレッカーで車をもっていかれたり、一旦停止でつかまったり、浜松駅で取材費五〇〇〇円を落としたりと、笑えるくらいの出費だった。
 猫がかすがいという結婚歴二〇年クラスの友人から「夫婦は一〇年もすれば愛情が薄れ、お互い好き勝手をしても気にならなくなる」と言われたことがある。そういえば、大好きだった剣道やスキーはほぼ一〇年で飽きてしまったし、燃えるサラリーマン生活もきっかり一〇年で完全燃焼したなあ。
 つい最近、八年ごとに人生の転機が訪れるというアメリカ人の友人に会った。今年仕事歴八年目を迎える彼はちょっとくよくよしていたが、妻がポンと肩を叩いて「気にするな」と励ましているのが微笑ましかった。