結婚、3つのつぶやき   文・稲本 幸



〈その1〉
 うちには、もらいそこねの兄と行き遅れの私がいる。そのことは両親にとって耐え難いほどの屈辱らしい。
 父宛てに電話があり私のことを聞かれると「まだ学校行ってますわ」とか言うのだ。確かに私は学校勤務だがちょっと意味が違うのでは?と思う。母は田舎の出身だからか頻繁に同窓会が開かれているが(結束が固いらしい)数年前からその同窓会に出席しなくなった。その原因の1つに、未婚の子供らのことを尋ねられるのが恥ずかしいらしいのだ。なんとかしてやろうとも思うのだが、親の体裁を整えるためだけというのは嫌だなぁ。
〈その2〉
 一時期、無理にでも結婚しろ!という雰囲気があった。写真・釣り書きを見ながら母が、
「良さそうな人じゃない?ねぇ。会ってみたら?」
「ふ〜ん。もし、そいつがあたしに暴力振るうような奴だったらどうする? あたしの性格だったら、絶対やり返すね。壮絶なバトルになるだろうね。相手が寝込んだら、殺しちゃうかもね。そしたら刑務所行きだね……面会に来てくれる? 不幸だなぁ。」
「……もういい。」口達者な娘を持った母親は不幸だなぁ。
〈その3〉
 私の結婚に関してうちの親(特に父親)は、てめえの利益しか考えていない。釣りに凝っていたときは、漁師の息子との縁談をさかんに勧めたし、いちご農家との縁談があった時は、自分がいちご狩りがしたいとの思いから、嫁に行くよう強く勧めたっけ。米不足の時には米農家とか米屋との縁談がないか田舎出身の母に聞いてたっけ。山菜取りに凝っている最近では、山菜が取れる地方に縁談がないか探している。まだまだあるけど、いいかげんにしてくれっ!