編集後記

▼私が最近泣きながら(実際に涙が流れた)読んだ本は、大崎善生の『聖の青春』と『将棋の子』です。こいつあ泣けたなあ。二つとも将棋にかけた青春の話だが、前者は羽生とも数々の死闘を繰り広げ、二十九歳の若さで逝った村山聖の物語、後者はプロ棋士になる夢に破れた若者たちの物語。二つともノンフィクション小説と分類されるもので、確かにその文章や構成はうまい。もうなんというか、泣かせる物語の王道をいってるというか。それにしても、夢破れた物語って、どうしてこんなに泣けるんだろう。
▼息子・健太郎は着々と言葉を覚えている。パパ、ママは当然(パパ、ママという柄じゃないが、保育園でそう教えられているらしいので黙認している)、風呂から出るときには「ワン、ツゥ、チュリー」と数えるし、「ぽっ、ぽっ、ぽー、はとぽっ、ぽー」と歌ったりする。それと同時に、思い通りにならないことに対しては、地団駄踏んで泣きわめくようになった。そうすれば願いが叶うことを知っているのだ。自分の思いを叶えるために身体全部を使って泣きわめく姿を見ていると新鮮な驚きがある。ほんと、その姿はまさに感動的だ。しかし、いつの日か、棚の上のおもちゃをとるために誰も抱き上げてくれないと気づいたとき、その涙はどこへいき、それとひきかえにどんな言葉を獲得するのか、またその結果、健太郎はどんな男へと変化するのだろうか。それが楽しみでもあり、不安だ。
▼いきなりですが、「手の仕事」復活。年4回の割合で雑誌「手の仕事」を発行していくほか、書籍も出版していきます。数人で出版社を設立することになったんです。地方で出版をすることの厳しさは知っているつもりなので、だいそれたコトは考えていません。大変なんだろうなということはわかります。今より貧乏になったらどうしよう。とりあえず具体化したらお知らせします。
▼ さて、次の「手の仕事メモ」のテーマは「借金」です。「借金」をテーマにして何か書きたいと思われた方は、ホームページからのメール、FAX、手紙、葉書などで四〇〇字程度にまとめて8月中に送ってください。よろしくお願いします。