決して感動ではなく 文・蒲生あつ子 |
バスで病院通いをしているおばあさんが時間に遅れてバス停に着くと、顔見知りの運転手さんが「心配してました」と待っていてくれた。遅い朝食を取りながら朝刊で見つけたエピソードに涙する。テレビでは「プロジェクトX」の中島みゆきのテーマソングが流れてくるだけで頬を涙が伝う。感情の振り子はいつも涙モードの方に振れていて、わたしは壊れた蛇口のようにだらだらと涙を流し続ける。うんざりしながら。涙と鼻水にまみれたティッシュペーパーを屑籠いっぱいにして。毎日。 |
泣いた日 文・川口晴絵 |
亡夫の十三回忌前日の夜、私は珍しく、おいおいと泣いてしまった。三人の子どもを抱え、孤軍奮闘してきたことを誰が分かってくれたのか。夫に先立たれた悲しみが、どれ程のものだったか、突如思い出したのだ。 |