□□季刊 手の仕事□□
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手の仕事Vol.10
クリックすると岡直さんの原画が見られます ●表紙イラスト/岡直
4月の終わりに初めての北海道旅行を
体験しました。 釧路から摩周湖、知床、
納沙布岬、阿寒湖など道東をバスで巡りました。
天気にも恵まれ、楽しかった思い出をモチーフに
イメージしたらこんな作品が生まれました。

●表紙デザイン/宮下義央

クリックすると岡直さんの原画が見られます

vol.10 コンテンツ
●街かど紳士録I●
 メロンパン上司の巻 --阪尾兼次
●イギリス便り●
 英国鉄道事情 --平崎誠司
ひと --神代隆文
●●仕事の時間●●
 はらはらドキドキアポなし取材 --筒井誠己・小出朝生
 近所はワンダーランド
●●一流の手を探せ!●●
 曳家・五代目源右エ門 小川衛さん --三澤武彦・小出朝生
サードライフ  --米山テツ
●●町たんけん●●
 其の二・尾頭橋 --アンドウカヲリ
●工場見学に行こう!●有限会社ナガエ・長江幸雄さん
 カーブに込めた職人の技 --寺川眞由美
●回想録その9●
  「昭和時代」と小林橘川 --鶴勲
ふとん三昧 --丹羽ふとん店・丹羽正行
わたしの居場所 --小出朝生
マトリョミンって何? --半田みすゞ
●仏ほっとけない話●
[マンダラ壁画] --外山杲見
●手の仕事interview●平井杢侃さん
 われ面を彫れり --山口結美
きのう きょう あした --荒川伽耶子
妄想王の極私的日常白書 --阪尾兼次
カリヤ展始末記 --柴田雅光
編集後記

□ 近所はワンダーランド

「手の仕事」というとモノづくり全般を対象としているような雑誌名だが、ほんとうは自分が住んでいる周辺で、意外にスゴイ技術を持った、けれども普通の職人に会って話を聞きたいというのが、実は正直な気持ちであることに改めて気づいたのだ。
・京金染物店
京金染物店は昭和二六年から、この場所で染め物をつくっている。戦前は名古屋の繁華街にある御園座近くで染め物をしていたそうだが、戦争中は綿の製造販売が禁止されたため染め物業は中断、さらに道路拡張などによって移転を余儀なくされた。戦後になって綿の統制が撤廃された後に、今の場所を見つけて移転。それ以来ずっとここで染め物をつくっている。

□曳家・五代目源右エ門 小川衛さん

曳家(ひきや)とは、建物を解体せずにそのままの状態で数百メートル、ときにはもっと長い距離を移動させる仕事である。有限会社五代目源右エ門代表取締役・小川衛さんは、三年ほど前、勤めていた家具メーカーを辞め代々続いた曳家の仕事を引き継いだ。子供の頃から人が足りなくなると仕事にかり出されていたから曳家という仕事がどんなものかわかっていたし「住み慣れた家にずっと住み続ける方法を提案できる面白さ」に改めて気付いたのだという。

□ 有限会社ナガエ・長江幸雄さん

・カーブに込めた職人の技
 長江さんのつくる鞄の中でも、今ではつくる人が日本に二〜三人という櫛型ダレスバッグについて話を聞いた。 ダレスバッグとは、終戦後、ダレス国務長官が持っていたことからついた名前だという。 その中でも櫛型ダレスバッグは開口部の口金がつげの櫛のようにカーブが付けられていて、とかく堅いイメージになりがちなビジネスバッグの中でも独特の風格がある。中は三つの仕切りがあり、真ん中にノートパソコン、左右にA四サイズの書類がすっきり入れられる。内ポケットには携帯電話や名刺入れなどがあり、ペンケースをつけて欲しいなどリクエストもできる。

□ 面打師・平井杢侃さん

・われ面を彫れり
 平井杢侃(もっかん)さんはもともと名古屋の郵便局に勤めていて、昭和六三年に定年退職。その後は愛知県労働協会というところで面打教室の講師をしている。郵便局に勤めているころからずっと面をつくり続けていた平井さんにとって、面打は単なる趣味というよりは、生きるために絶対に必要なものだったようだ。